ヒロインは観客でした!(わたモテ感想)

私がモテてどうすんだ』を観た。以下ネタバレ含んだ感想です。

映画の実質的結末である2巻までですが、原作も読みました。

原作は太った腐女子が痩せてモテるシンデレラ方式+モテるキラキラ+主人公目線のサービスBL、の詰め合わせ。最後のは少年漫画のエッチな描写的配合。なんせ本気でBLやってないから!好きな人は好きだと思う、絵も可愛いし。気になる人は是非。

 

公開直後、「懸念してた点がうまく描かれてて良かった!!」という絶賛が耳に入った。痩せた途端よってくる男が倫理的にムリ、みたいな懸念だったりしたわけだけど。ツイッターでは「外見だけを見てるのは、痩せて可愛くなった女に群がる男も、イケメンをBL扱する女も同じ、と提示されてて相殺」みたいなのを散見した。ここで「何よ~~0キスレベルの名作なワケ~~?(私は0キスより、ういらぶが好き)」とハードルが高くなってしまって後に若干ガッカリする事になるが、本当の問題はそこじゃなかった。

この映画、結局何だったんだよ!?となる人が多いと思う。私も直後はそうなった。なんてったって、結局主人公・花依は誰とも恋をしない。これは、ラブコメをウリにした映画じゃ稀に見る結末だと思うね。私はラブコメのつまらなさや虚構を含めて愛してるタイプの人間だから結構ラブコメ映画を見てきたけど、大体そりゃあ相手は決まりますよ。

わたモテの「(良い意味で)マジでヤバイ」ところは、全力フルスロットルでラブコメアピールをしておきながら、まったく本質的な「ラブコメ」をしていないところ。いやコメディの部分はしたけど。ラブがないんだよな。確かに男どもはラブしてたけど、物語の主人公は花依なのだ。劇中劇の作用として、一時リバウンドした花依が『一度自分がすると決めた演劇の為に』痩せようとする描写がある。花依の中で4人のうち誰かが好き、という気持ちがないから4人の事は全く理由に入っていない。ラブコメ映画としては、両者の心に気持ちが無ければラブではないんだ。(自論)

登場人物はすべて、「自分がちょっと成長する」。花依は「誰にも期待されず、何も決断出来なかった人間」から「誰かに好意を寄せられ、自分で決断出来る」ようになるし、男どもは「表面しか見ていなかったけど、内面の大切さにも気づく」。どころか、「相手の気持ちを考える事」を六見から教わる。ちなみに六見は変わってない。六見は最初から外見で人を判断せず、3人がいるため余計、美点に感じる。でも六見は3人の考え方を理解出来てない。理解して諭すとかじゃなくて、まずずっとわからない。イヤ~そういう意味で、この役に吉野北人はナイスキャスティングですね。

こうやって本質的には恋愛とは向き合ってないけど、表面的なラブコメポイントはかなり抑えてくる。五十嵐が途中走りだす描写は、近年のラブコメの傾向「男が走る」が見れてよかった。コメディ処理されてたけどね!男どもはとにかく花依にアピールしまくるので、そういう点でラブコメ要素は回収。腐女子という特殊要素消えてんな~と思ったところで、ああいう形で入れてきたのには驚いた。でも花依は結局、自分の恋愛には消極的なままだし、男たちもなあなあで、それこそ「ゆっくり待つよ」。★俺たちの旅はまだまだこれからだ!状態。恋愛的には何も解決してない、どころかスタート地点(現実と向き合う)に立ったところ。まあ、その為の話だったんだけどね。そんなこんなでラブの要素はありもしないが、うーんそう、多分ヒロインは観客なんじゃないかなぁ。花依の意思のないラブのされ方や、TO観客BYイケメンのカメラワークだった時もあった。なんせ原作と映画でターゲット層が違うもんだから、そう処理した方が自然だったのかもしれない。

ブコメの皮を盛大にかぶったコメディ青春劇。ラブは観客に与えられてたと思うとなんだか男どもが切ない気もするけど、花依は今日も元気に己の趣味を満喫するのだった。私、これはこれで好きですよ。

 

蛇足

・やたら、心象風景的な描写が上手い。最後のなんか、絶対そうだと思う。王子様と王子様の劇をするのは高校の真面目な演劇祭(しかも、あの部長と部の歴史)ではありえないんだけど、アレは花依が「王子様の隣には王子様」を貫いた心の描写なんじゃないかなぁと思ってる。最後に二人の花依が出てきて同じステージに立つところも、男4人、そして花依自身も、痩せた自分と太った自分両方に何の差も感じないっていう表現な気がした。(花依は元々自分の外見に興味ないけど)

・監督のノリさんのミュージカル描写はうまい。ミュージカル描写の必要性が深刻に問われた「オタクに恋は難しい」と比べて格段に上手い。前作からして、オープニングやエンディング的な曲入れは馴染みやすいし、他の部分は完全コメディとして徹底。しかも本来ボーカリストである吉野北人の歌となったら、サービスシーンって事で受け入れられ易い。いろんな意味で。元々ノリさんは舞台の人だから、その辺が活きてるのかな?

・わたモテの原作からそうなんだけど、男にモテるようになったからって「恋愛したら腐女子を卒業」に帰結しないのはすごく好き。恋愛ではなく趣味なのだから。だから六見はよくわかってる。「花依が大好きなBLの話をした時」に、六見が花依を好きだと気づいたシーン、思い返すと六見の良さがつまってて、本当に良い。話の内容なんて六見にとってはどうでもいいのだ。六見は、自分の好きなものに夢中で自由な花依を好きになったって事なんだ。

・突然のGetWild。もっこりとか言うし。今どきのJKどころか10年前のJKですらシティーハンターを履修している気がしない…ジェネのドームツアー(※少年クロニクル)でも流れてたから、巧妙な伏線回収かと思ってしまった。中目黒プライベート・アイズ?

・六見、良すぎ。むちゃくちゃ既にバレてそうだけど、六見のキャラが吉野北人にマッチしてて良すぎた。私は本来吉野北人が所属するランペイジのファンだけど、六見を見た後、吉野北人が好きな気持ちすら大きくなった気がする(なんでだよ)。若手俳優と並んで、何ら遜色の無いフェイスも流石。正直、一番こういうのに馴染むのはTRIBEでは彼だと本気で思った。最後のアイドルっぽいダンスも、普段ダンス&ボーカルグループにいるとはいえ、ダンスの種類が全く違うから最高でしたね。良い役もらって、良い芝居をしたなぁ・・・。そういえば、別腹で五十嵐が好きでした。いつの世も、報われない一途な男が好きなんです…

 

このコロナ禍の中、正直「是非見に来てください」と一概にも言いづらい状況でよくぞ公開してくれたという気持ちで観に行きました。途中ダレかけたりするししっちゃかめっちゃかではあるけど、新しいラブコメが観れるのは確実なので気が向いたら見てほしい。ラブコメ特有の描写は10秒くらいだし。

わたモテダンスで残像に浮かぶ呪いをかけてくれた浦川翔平くんは、責任をとってキラキラ映画に出てほしいです。